2008年10月9日木曜日

時効せまる・若花菜さん殺し 1

「はちのへ今昔」が過去に掲載した事件を再掲する。
憎むべきは殺人犯、自分の欲望を遂げるために一直線に目標に向かって突っ走る。そして、何の罪咎のない中学二年生の生命を奪った行為はどのように弁解してもしきれるものではない。その犯人が、この八戸の空の下にいると思うと腹立たしいを通り越して憤りを感ずる。この中学生も生きていれば二十歳を迎える。どんなにか無念だったろう。悔しかっただろう。新聞記事からも活発で利発な子だったことは判る。
 この子の無念を晴らすために今一度市民の皆さんに当時を思い出してもらうために、平成五年の十月二十七日はどんな日だったかを記してみる。
 平成五年の十月は野村監督率いるヤクルトと西武が日本シリーズの覇権をかけての試合をしていた。二十五日の月曜日は西武球場でヤクルトが西武を5-2で破り二連勝。秋季国体が徳島市で開催され本県選手は入場式に二番目に登場。同日、八戸市では中里市長と畑中哲雄共産党新人が市長選の第一声を上げた。中里市長は五十万都市実現へ続投を呼びかけた。青森放送テレビは『世界まる見え!テレビ特捜部』『関口宏のびっくりトーク・ハトがでますよ!』、青森テレビは『水戸黄門』『月曜ドラマスペシャル森繁ドラマシリーズ「おやじのヒゲ15」』を放映。
 十月二十六日火曜日は日本、宿敵韓国破る、夢のW杯出場へ大きく前進、カズ千金ゴール、後半14分とサッカーの試合が大きく報じられている。神宮球場では西武が7-2でヤクルトを撃破。国体ではレスリングのフリースタイルで工大一高の小笠原選手が三位に輝いた。
 こんな日々が続いた中での凶行だ。十月三十日土曜日のデーリー東北は次のように伝えている。走り去った中年男、犯行直後、付近住民が目撃、捜査本部似顔絵作り聞き込みの大きな活字が並ぶ。
捜査本部は二十九日も凶器や遺留品の発見を急ぐ一方、若花菜さんの下校コースや現場周辺の聞き込み捜査に全力を挙げた。凶器などは依然発見されていないが、犯行当時「現場付近で不審な男を見かけた」との複数の情報もあり、捜査本部は似顔絵を作成し事件との関連を調べている。捜査本部に市民から寄せられた目撃証言で、これまでに複数の『ナゾ』の人物も浮上。この中で、犯行直後に現場付近から走り去った中年の男性が住民に目撃されている。捜査本部は有力な手掛かりとみて、似顔絵を作成し、人物の特定を急いでいる。また,若花菜さんの通学路コースを中心に新たな目撃情報の収集に全力を挙げている。
 三つのナゾを探る
なぜ「きょうは早く帰る」

犯行時間、若花菜さんは犯行当日、午後六時ごろ帰宅。母親は同二十五分ごろに帰宅している。このわずか二十数分の間の犯行だった。
 若花菜さんは通常、午後五時半に部活動を終え途中の食料品店に立ち寄るため、帰宅するのは午後六時半ごろ。一方、母親の帰る時間は子供たちの帰宅時間に合わせるよう職場で調整しているが、午後五時から七時と幅がある状態。しかし、ほとんど子供たちと一緒にいる日が多かったという。このような状況の中で母親に目撃されずに犯行・逃走したのは偶然だろうか。
 また、普通であれば一人で母親の帰りを待つことのない若花菜さんだが、犯行当日は「きょうは早く帰らなければ…」と友人に漏らしており、早い帰宅の理由が事件の一つのポイントだ。
包丁持ち出したのはだれ
現場状況
 若花菜さんが遺体で見つかった自宅六畳間には、台所にあるはずの小型出刃包丁が放置されていた。血痕が全く付着しておらず、凶器として使われた可能性はない。犯人は、凶器をあらかじめ準備していたとみられ、だれが、何の目的でこの包丁を台所から持ち出したのかナゾのままだ。
 若花菜さんは、帰宅した後、六畳居間の室内灯をつけ、コタツのスイッチも入れたとみられている。この際、犯人に襲われたと仮定すれば、若花菜さんが包丁を持ち出すことはほとんど無理と考えられる。犯人を振り切って台所に行ったとしても、血痕がそこでひとつも見つかっていないのは不自然なうえ、玄関がすぐ近くにあり外へ逃げるのが可能だったと思われる。
 また犯人が持ち出し、凶行に及ぶ際にあらかじめ準備していた凶器に取り替えたとは考えにくい。台所に血痕がない点から、負傷する前に若花菜さんが威嚇などの目的で持ち出した可能性も捨てきれない。最初、警戒感を抱かない顔見知りか、そのほかの訪問者を玄関に迎えた後、身の危険を感じ持ち出したが奪われ放置された-との線も否定できない状況だ。
心臓に致命傷、顔見知りか
心理
 遺体にはふくらはぎ、ひざ、首に切り傷があったほか、致命傷は心臓を貫通する刺し傷だった。明確な殺意を示す部位だけに事件当時の犯人の心理が、事件を解く一つのカギとなっている。
 心臓を貫通させる刺し傷について心理学に詳しい大学教授の推理によると、「犯人は顔見知りの可能性が強いと考えられる。事件後に被害者から証言されれば、自分の犯行が明らかになってしまうことを恐れ、徹底的に攻撃を加える場合が多い」と分析する。
 犯行当時、室内の物色もなく、争った形跡もない点などを推論の補強材料として挙げる。一方顔見知り以外の可能性については、「顔を目撃されても自分の立場が危うくならない人物にすれば、殺すまでには至らないと思われる。犯行後に逃走すれば事件との関連がわからなくなるからだ」と指摘する。
 現時点で犯人像が絞り込まれていない中で、残忍な犯行が何を示しているのか。傷の部位をめぐり、顔見知りによる犯行説も一つの可能性として浮かびあがってきた。
十月三十一日日曜日
 現場に吸いがら、缶コーヒー
 女子中学生刺殺顔見しりの線濃く
自宅で会う約束していた?
 八戸署に設けられた捜査本部は三十日も凶器や遺留品の捜索や現場周辺の聞き込み捜査に全力を挙げた。これまでの関係者らの証言で、若花菜さんが学校で「六時までに帰り二十分ごろまでは家に居なければならない」と友人に漏らしていたことが判明。さらに、自宅居間のこたつ上に家族以外のものとみられるたばこの吸いがらなどがあったことから、顔見知りによる計画的な犯行との見方が浮かび上がっている。