2009年4月19日日曜日

明治四十二年の八戸

当地には開業医十三名の多きに達し戸口に対しては過剰の方に有之候得共先輩あり新進あり各自特色特徴を有し夫れ相応に流行致居候就中世間に最も信用有之候は種市、武藤、藤田、羽生の四国手にして其呼声別して高き方に承知致居候
一に親切二に手当てと言える諺の如く医師には親切と同情無之候ては如何に技量が抜群にても又衣服が雅美にても患者には左程効能を感じ不申候貧家にもあれ夜中にもあれ請求次第往診し貧家なれば夫れだけ同情を表し富家との差別を立てずして診療可致は仁術の仁術たる所以にて可有之然るに十中の八、九は患者の身元を本位とし富家なりと聞けば道路の遠近と昼夜の区別とを問わず診療中の患者を放棄してまでも飛び出すが常態にて有之又之に反し貧家なりと知れば現に在宅でありながら不在を唱いて玄関払いと致し百万遍請求したればとて梃子でも動く者に無之若し其患者に薬価の停滞等有之候場合は反対に全部の払い込みを求め候など為に診療の時期を失し急症患者は往々非命に斃れ候者も有之其の不仁術の所為実に悪むべき次第と存候
種市良一国手の今日に於ける盛運を開かれ候には種々なる遠因近因も有之候得共同氏は先天的親切と同情に厚き人に有之内外両科の衝に当たり日々暇なきに関わらず患家より急聘これ有候時は如何に劇忙中にても又就寝中にても往診し其の患者に対する言動の親切なること宛も慈父母の如く所謂一視同仁にしておきがたき患者なりとすれば請求を待たず回診いたすのみならず薬、診療費如き正確不足あればとて決して過当の請求なく十年一日の如く其の職に精励せられし結果にほかばらざるものと存候
しかも氏は深く公共事業の観念に富み又後進養成の義侠にも富み篤志看護婦会外二、三の嘱託講師を担当しかつ多年避病院の主医師として尽力せらるる所あり後進生の為には自費を擲って学資を供給しよく其の器をなさしめたる者少なくこれらは世間の未だ知らざる所は貧家に対する氏の同情にこれあり候医師の多くは仁術の名を売りて患者を招致せん為め故らに貧困者には施療すなどと吹聴いたしおり候得共其の実は偽善的名義のみにして適々施療を乞うものあれば役場の証明書を持参せよとか申し込みの言語が横柄にして無礼なりと種々理屈を主張し容易にその請求に応ぜざる者多き由然るに氏は患家の内情を実見し薬価等の支払いに差し支え候者と観察いたされる時は施療と言わずして仮に五円ある分に対しては五十銭若しくは一円として名義を付し実費なりとて申し受け又真の貧困者に対してはかなり手数を省略し施療を快諾せらるるが例なりとうけたまわり候などは全く氏が天性の発揮する所にして他の容易に企て及しあたわざるところの義と存候
氏は資性温恭にしてしかも精敏の気眉宇間に充溢し侵すべからざる所これあり
医師と看護婦もしくは患婦等に醜聞関係のあるは当然、之なきは寧ろ不可思議位の今日に際し氏には更に右等の醜評これなく以って氏が如何に身を奉ずること謹厳かつ方正なるを知り得べく候氏が嗜味は医学上において旧説にも深甚なる趣味を以って研究し又新説に対してはあらゆる著書を渉猟し出京の折は大家について研鑽修得せらるるの一事にこれあり畢竟職に忠実熱心なる結果と推考致し候とにかく氏の如きは斯業界にめずらしき一人物と称するも決して溢美ならずと確信致しおり候

○ 魚市場不認可
十一日町に新たに魚市場を設置すべしとて小松辰次郎より出願したる件は調査の結果知事より不認可の結果を受けたりと
○ 舘村役場移転問題と正義派
現在の舘村役場は一時民家を賃借し充用し来れるものなるがいやしくも一村の政務を取り扱う公衙としては不適当不体裁なるより之が新築の必要は数年前より村内一般の認める所となりし結果右費用としてすでに七百余円を準備せしより愈々機熟して本期の通常村会於いて満場一致新築を可決し事なるがその際位地に就いて寺沢議員より建議あり其の大要は従来の役場は一部の村民には便利なりしも多数の村民は二十余年も不便を忍び来たれりを以って今回の新築を機とし一般の便利を図るが為め大字八幡に卜定すべきと言うにあり採決の結果五名に対する七名の多数にて可決確定したるに関わらず反対派は個人利害を本位とし無知の村民を扇動して種々運動を取りしより出町村長は無責任にも超然主義を言明して尻を監督庁に持ち込み其の処断を放擲し更に頓着せざる有様なるより正義派の寺沢、吉岡、佐々木、三浦、出町、松田、岩沢の諸氏を首めとし村民四百余名は大に村長の優柔不断を憤り村会の確定議を無視し暗に疑いを反対派に通じ両天秤を振り回すに於いては先ず不信任を決議せざるべからずといきまく者ありいづれ本問題の解決如何によりてはひと活動を見るべき形成なり監督庁は宜しく世論の趨勢に稽いこの際速やかに解決を与えるが必要なるべし

明治四十二年四月十九日版
鯨体解剖所再挙の絶望
沿岸漁民に対する報復手段
解剖所設置の絶望 大日本捕鯨会社の企画せる蕪島に於ける鯨体解剖所の設置は地方庁より不許可の指令ありたるを以って彼らは更に鮫沿岸の私有地を卜し再挙を企つべしとの説ありし故、吾はとりあえず之を前号にて報じおきしが尚聞く所によれば彼らが目指せし該私有地は鮫村松橋兵八氏所有の由にして、同氏は捕鯨問題の起こるや率先挺身解剖所設置に反対したるのみならず、資性狷介剛直利益に叩頭(こうとう・頭を下げる)して公益を無視するが如き人物にあらざれば、捕鯨会社の交渉には到底応ずべくもあらず、かつや幸いにして適当の地点を得て之に設置するとても激昂せる沿岸漁民は袖手(しゅうしゅ・何もしない)彼らの為すがままに委(まか)すべきや、多数の利益に反したる企業化に対する高圧的運動は、吾のしばしば目撃する所、○○彼の鉱毒問題やトロール事件にても一般の知らるるべきに非ずや、今日当地沿岸に於いて捕鯨解剖所を強いて設けんとするが如きは吾は一営利会社の為に之を取らず、かの如きは徒に地方の公安と安寧を害うのみにして、百害あって一利あらざればなり、之を○するにかく漁民の一致反抗ある以上、近海沿岸に於ける解剖所設置は当分絶望なりと言うべきなり
はちのへ紙の狂態
捕鯨問題の起こるやいち早く之に賛辞を呈し社員を石田亭に伺候せしめて解剖所設置に助力至らざるなかりしは「はちのへ」新聞社なりき、彼らは捕鯨解剖を以って何等漁業に有害なるものに非ずとなし、捕鯨会社企画を以って地方における一美挙と頌し之に反対するは狂愚の所為と断ぜり、すべて一朝漁民の大反抗来し、我が社亦漁民の言うところに聞き敢然として本問題解決の任に当たるに及び天下の信望○然としてわが社に集中するを見るや、「はちのへ」紙の懊悩煩悶言わん方なく遂に去る十三日の紙上に於いて一大狂態を演出するは読者諸君のつとに知らるる所なるべし、彼らは冒頭第一に水産家の言に聞き漁業に対して妨害になるものではないとの言を信じ漁家の間接なる利益なるべしと思うて書きたる迄なりと弁ぜるも、之何等弁解の辞となるものに非ず、いやしくも一管の筆を握りて職を操觚(そうこ・文筆に従事する)に任ず、一言一句も直に幾万生霊の安寧幸福に影響する事あるを思はば、何ぞ軽々に速断盲動を許すべけんや、「はちのへ」紙の言の如きはただ自家か無定見無方針無見識を表白するのみと知らずや、而して二つ石事件の当時極力尽瘁(じんすい・一所懸命に力を尽して労苦する)して漁家のため貢献しても一文も強請もせず恩を売ったこともなし、何時も漁家の不利益を図る様なことはせじ、今回の事も決して漁家の不為になることではない元々利益する所あれと祈る所から報道をした迄である。口吻は宛然としてよく小説にある「お前をアノ旦那の愛妾としようとするのは、決してお前の為悪かれと思うからではない、お前をこう大きくするまでには並大抵な苦労ではないのだ、お前に三味線や遊芸を仕込んだが如く愛妾とするのも、お前が立身の為」との強欲婆が養女を猫なで声で説得するにも似たらずや、彼らが沿岸幾万人の犠牲とせる、捕鯨会社の企画に賛助を与えながら一方漁民に対しては其の利益を保護すると称し、又次号にては翻然反覆遺憾なる指令なりとか、理事の懐旧談とかの泣き言を陳ね、首尾転倒支離滅裂論旨の透徹せざる吾はむしろ気の毒の感にたえざるなり、殊にわが社に対する讒誣(ざんぶ・他人を陥れるため、事実を曲げ悪く言うこと)の材料として二つ石事件と福田祐英氏の往事を並べし来たり、石橋、福田の両氏ともわが社同人の同志なるは事実なり、然れども是は或る限度の社会上の行動における同志で、二つ石事件や漁業組合やに於ける二氏の行為は例え如何なる行動ありしにせよ、責任は両氏において負担すべき一個人の私行為にして、決して吾の責務に煩いすべき限りにあらず、然るに「はちのへ」紙は鬼の首でも得たるが如く之を以って吾が行動を律して中傷を試みんとす、あたかも黒布を以って太陽の光輝を奪わんとするの愚と選ぶなけん也、かつや「はちのへ」紙の陋態(ろうたい・いやしい様子。みぐるしい姿態)として二言目には必ず金銭問題に非ずんば選挙の際に於ける利益問題を云為す曰く奥南社は運動費若干を強請して拒絶せられたりと、曰く選挙の際に於ける利益の提供を迫りたりと、是等は自己のみにくい心を以って他を忖度するの甚だしきもの也、吾は政見の抱負より時に逐鹿場裡馳駆することなきに非ず、又金銭は或る程度まで社会的活動に必要ならん、然れども是あるが為に吾が究極の目的はこれありとなし、吾の行動は一々之に拘束せられるとなすはあやまれるも亦甚だしと言うべきなり、殊に本問題の如きは地方沿岸幾万人の利害休戚(きゅうせき・「休」は嘉、「戚」は憂の意 喜びと悲しみ。よいこととわるいこと)に関する一大問題にして、決して党派関係や利益私情を挟むべきの問題にあらず、勿論「はちのへ」紙の妄言の如きは世上一人の之を信ずるものなく我が社の公明正大は既に大方識者の諒知せらるる所なるを以って敢えて弁妄の要を見ざるも一言ここに真意を陳せん、吾は彼の権勢におもねりて言を枉げ黄白に眩して説を二、三にするが如きは断じて之に与せじ、世の詼諧かいかい・おどけふざけること。おどけ)売文の徒と同列視するに至っては吾は実に片腹痛きに堪えざる也
腹癒せ的報復手段 
長谷川一輩の徒は沿岸に於いて到底解剖所設置の場所を得ざるより、漁民に対する腹いせ的手段として利益の損得に係らず、近海地先専用漁区域外に捕鯨船を引き来たり、面当てかたがた捕鯨解剖に従事すべきを公言しつつありと専用漁区外にての彼らの行動は法制上或いは沿岸漁民の如何ともする事能はざる所なるべきも漁民の凡ては申し合わせたらんがごとくに実に左の決意を有せるを知らざるべからず
一沿岸漁民は捕鯨船の近海に立ち寄るを断じて許さず
一漁民はこの目的の為めにはあらゆる手段を講ずるを辞せざるべし
かかる決意を有せる漁民に対抗して捕鯨業に従事せるは捕鯨会社の立場として決して策の得たるものにあらず、捕鯨会社たる者宜しく事件の大局に注視して速やかに近海沿岸における一切の企画を徹し漁民をして一日も早く不安の念を絶たしむべき也、今や本問題も一段落を告げたるを以って吾は一先ず筆を置かんとするに当たり大方識者の指導に依り、吾が微力を以って本問題解決に涓埃(けんあい・しずくとちり。転じて、極めてわずかなことにたとえる)の資をいたしたるは、吾の密かに快とする所なると共に諸君が指導に向かって其の労を謝せんと欲するもの也
三戸郡第二回物産展
評価ニ二等賞を得たり
箪笥家具小細工業
八戸十六日町上角
西村徳助
春肥用格安魚粕種々仕入れ置き候
八日町
大岡肥料店
弊館調整の写真は色沢鮮美不変色にして最新流行各種写真大勉強貴需に応ず
写真 各種大勉強 中番町
高野写真所
弊館は懇切を旨とし且つ御満足を充すに努め多少に拘わらず出写のご依頼に応ず
各種博覧会品評会において
銀牌銅牌及び賞状を得たり
十六日町六十番地
最上醤油
しら藤印
味噌各種
加藤庄五郎
新流行
教員学生服
元浅沼
清野裁縫店
二十三日町