2007年8月1日水曜日

東奥日報にみる明治三十二年の八戸及び八戸人

演劇 市川歌升、大村大三郎の新旧合併演劇は本月十二日より二十六日町神明構内にて興行
八戸通信 六月八日付
運動会 八戸高等尋常小学校にては同校構内に於いて本日運動会を開けりこの日朝来微風晴天にして高く万国旗と運動会の旗を翻し表門には国旗を交差し戦利品を陳列数回の運動を行い賞品を授与せられぬ生徒の父兄及び参観人は山のごとく飲食物を売る商人も見受けられぬ
養蚕業 漸く発達し来らんとせし八戸町の養蚕業は米四事件の余波横浜における生糸の価格大いに低落すべしとの予想より本年は一頓挫を来たし掃立の数量は昨年より減ずること二割なる由されば桑葉の時価一眠頃迄は一貫目十五銭なりしに目下漸く下落し本日の相場一貫目八銭にして品潤沢なれば尚下落の傾向を有するものの如く蚕児は二眠三日後位の由因みに記す八戸実業補習学校の養蚕は頗る好況なりと
種痘 八戸町に於いては昨年二月より本年二月までに出生したる小児へ種痘せしむべきことを巡査をして毎戸に達せしめ怠るものは取締規則に依って処分すべしとて種痘を励行しおれり
八戸の非増税運動 八戸土曜会派にてはこの際一日も運動を忽にすべからずとて既に委員を上京せしめしが八戸公民会派の多数を占める八戸町にては臨時議会の延会をまって之を断行することとなり土曜会派の交渉を躊躇し居りし所果然議会は延会となりしを以って八戸町長遠山景三氏は直ちに八戸町の地主に請願書に調印を求めけるが尚上京委員の事につき一昨日町役場に地主を○し協議する筈なり
八戸通信
○ 鮪漁 三戸郡小湊村に於いて本月四日鮪の大漁あり為に八戸魚市場は前日来の価格頓に挫け一円に付き四貫目という大暴落を来せり但し本日は吹風降雨の為不漁なれば或いは一変動を来すならんか
○ 鰯漁 八戸の経済に重大な関係を有する鰯漁は本年如何なる景況なるべきや古老は正月二十三日夜の月によりその一年間の漁不漁を卜するに殆ど的中する而して本年はいかにと聞くに必ず大漁ならんとのことなれば漁民をはじめいずれも喜びおれり本月下旬より夏漁始まるべしとのこと
○ 麦 八戸付近における本年の麦作は平作よりも劣るならん所によりては目下五六寸のものあり是れ五月中旬連日降雨なく大風吹き荒びて根を枯らせし故なりとぞ尤も近日数度の降雨にてやや生気を回復せしものの如し
○ 縁日 八戸町を隔たる三里余なる三戸郡階上村の寺下観音は本月五日縁日なるを以って昨日来曇天にて殊に早朝より降雨ありしに拘わらず八戸町は申すに及ばず近郷近在より参詣するもの甚だ多く為に参詣を見込みて開店せし太物店一、小間物店四、飲食店菓子店十四五ありしが何れも十分の収益ありしなるべし
○ 大さらい 小中野新遊郭柳本楼において来る八日正午より浦町、新地の芸妓酌妓連二十余名の常磐津大浚を催す由なれば酔連には今より美音を聞くを楽しみ居るとか
八戸町短信
○ 八戸貯蓄銀行 本日より貯金利子を引き上げ年六分と改正したり
○ 法学卒業 福士協助氏には日本法律学校三ヵ年の過程を卒業しこの程卒業証書を授与せられたり
○ 階上銀行員 高島、平賀の諸氏は東京なる銀行事務講習会へ一同入会し特に同会と気脈を通じ毎日曜日を期し講話会を催し熱心に講習中なり
日本鉄道会社と運送業者
新たに保証金を徴す
日本鉄道会社に於いては今回各駅に於ける運送業者に対し新たに保証金をださしめ之を会社直轄の運送業者とみなすことになり其の保証金は東京は千円地方五百円宛てを納めしむる予定にして之を四十余駅に割り当てれば其の額莫大なりと而して其の決定せるは実に客臘(かくろう・去年の十二月)のことなり
従来は各運送会社は特政の上相当の保証金を納付し各地各駅の代理店、出張店等は単独にては別に保証金を要せざりしか今回比制を設けたるにより各地の運送店にては直轄にならんとせばこの保証金を納めざるべからずして地方の小駅に於ける各運送業者は非常の困難を感ずるならん
今会社は何が為にこの政略をとりしかを聞くに業者大なる魂胆ありて存するなりもし会社にして保証金の制を定めんか各業者は正金を以ってこれを納せるの不利益にして多くは会社の株券を以って之を納付せん何となれば株券にて納むれば株に対する配当は自家之を受けるの利益あればなりたとえば新たに買い求むるも尚株券を以って納付するに至らん而して会社の希望亦実に前に存するなりと言う会社は何故に何故に株券の納付を希望するかこれは魂胆の大魂胆のある所なりもし各運送業者にして株券を買い求めて之を納付することならんか市場における鉄道株は大いに好況を呈するに至らん好況を呈すれば従いて価格の騰貴を見るに至らん是会社のこの政界を探りし所以なり然らば会社は何ゆえに鉄道株の騰貴を欲するかと言うにこは目下政界の一大問題なる鉄道国有論の愈々実行せらるる暁政府が買収価格の標準を高からしめ高価を以って買収せらるるの利益を得んとするに外ならず今回各運送業者に対して保証金制を実行するに至れる真意もそこに存するなり
末謙一行来県の始末 八戸にて人糞を投げらる
さてもこのたび山縣内閣を援けて農民殺戮税を通過せしめたる増租党の遊説者伊藤大勲位侯爵の女婿文学博士前の逓信大臣男爵末松謙澄を初めとし一味の徒党宮城の住人菅原の伝、同じく山縣の住人前の青森県警部部長変節代議士小倉の信近その他名もなき雑兵奥野市次郎、斯波與七郎なんどの面々顔厚くも我東北の野に向かって其の汚れ果てたる顔を晒さんと京地をば出発しぬ
由来東北は正義の士に富むたとえ藩閥政府に降参したればとて何条彼等の蹂躙を許さん況や黄金を、官職を況や、即ち彼等一行の到る所悉く冷遇を受けたることは事実蔽うべからざるにも拘わらず只御用紙を利用して其の盛況を装はしむるに過ぎず然れども是藩閥政府を援けて多数の国民を虐待する私党に向けて天の当然に下したる制裁なるを奈何せん
彼等は公然増租党遊説員の資格を以って新聞紙は之を伝え彼等亦意味を以って遊説するにも拘わらず増租党の甚だ人気悪しきを知るを以って卑劣にも狼の頬冠(ほおかぶり)主義を以って他を瞞せんとす彼等の未だ京地を発せざるや実業家として名ある而かも今回増租党の中堅たりし渋沢栄一と言えるは私交あるの故を以って当地の渡辺佐助氏に宛て左の如き一書を送り越しぬ
拝啓益々御清安奉賀候然れば男爵末松謙澄君義各地経済事情視察方々来一月五日頃出発貴地方へ漫遊致し候に付可相成各地方有力家諸君と談論致度との希望を以って予め小生より御照会致し呉候様依頼有之候間貴地到着の上は御差繰御面談被下度候同男は小生とは私交上年来御懇意に致居候間柄に付特に申上候義に御座候右可得貴意如比に御座候敬具
       渋沢栄一
十二月 渡辺佐助殿
渡辺氏は余りに政治の表面に現れざる人なることは衆の知る所然るに私交ある渋沢より右のごとき書面を得たるのみならず経済事情視察と号するを以って深く顧念する所なく渋沢に対する交誼上誤って増租党の遊説員末謙一行を歓迎せんと愈々一昨日一行の比の地に来るの日を卜し招待せんとて市中の主立ちに通して賛成を求めぬ
これより先末松一行のこの地に来らんとするを聞くや県下非増租派の激昂一方ならず藩閥の党徒をして足をこの地に入れしおるは地方の不名誉なりとし十日の夜をもって政談演説会を開くことに決し尚其の前日を以って有志あい携えて渡辺氏を訪い増租党の遊説員を歓迎することの不利益なるところを説きて反省を請いしに諸君の事情は之を諒せり然るべく取り計らうべしとの事を答えられたり
拝啓先刻は失礼仕候
然るに末謙招待云々については下店においては心内に何も政党もなし目的なし只別紙渋沢栄一紹介に基づき真の商業家ばかり賛成募候処二十七八名有之候得共別に実業上の懇話に止まるの精神なれども君等御説の如く上部は実業にて内心党勢拡張等の末謙氏等の事実ならば当家にても君等の反対を受けてもぜひ末謙を招待せねばならぬ義理もなき故当方はただいまより八戸出張親敷末謙氏と面会の上来青を謝断するなり御了承ありたし外に万万申し上げたきこと之有り候も時間は五時五十分につき略筆せり
いずれ遅くも午後九時の汽車にて帰宅候その後御光来被下候はば幸甚なり右申上度一書残置候也かくて慶助氏は八戸に赴きたるに同日午後十時にいたり渡辺家より八戸なる慶助氏に宛てて左の電報を発せり
益々不穏是非御出なら懇親会止むるより外なし模様
十一時到着にて八戸の慶助氏より左の返電あり
委細話した午後演説会済み次第相談返事する積もり右のため今晩泊まる
慶助氏は末謙一行と会し相談を遂げたる末左の電報を当地なる渡辺家に送りぬ
明日の会止めろ明日一番にて帰る
ここに於いて一度は催すべく賛成者を募りたる末謙の歓迎会は中止する事となりたるなり渡辺佐助氏の名義にて賛成者に向かって左の如き紙面を発せり
拝啓陳者男爵末松文学博士御来県に付御招待の義御案内に及び候処御賛成被下候段御厚意奉謝上候然れば同男爵より別紙電報の通り懇親会謝絶相成明日の会相止め候間御承知相成度比段御礼旁御挨拶申上候也
斯くして末謙一行は広き青森於いて一人も迎えるものなきなり以って増租党の遊説員はいかに冷遇せらるるやの一斑を推すべし而かも彼等の強情なる青森はいかに我等に反抗すべきを見んとて愈々一昨日を以って当地に入れり嗚呼彼等の強情藩閥内閣の蛮勇よりも甚だしきを見よ
末謙人糞を投げらる
増租党遊説員遊郭に招待せらる
増租党の遊説員は八戸に於いて散々の冷遇を受け同地方にては同党のためには会場さえ貸すものなく謝絶又義絶一行の到着せる当日尚会場なし之がためにはせっかくの招待会も将にオジャンとなる有様なるより工面に余りて混迷しやけん見苦しくも更に遊郭なる小中野村の貸し座敷万葉亭に会場を設けるに至りとは一行の面目この上やある蓋し政党の遊説員の招待会貸し座敷に開かれるは実に之を以って嚆矢と為すべく流石は末謙の君伊藤艶侯の婿君だけありて定めし満足に思いたるならんと同地の評判なり
以下略
八戸町の市況と漁夫雇い人
八戸町にては金融逼迫相変わらずして米価はやや気強くなれり例年当時は北海道出稼ぎ人夫の雇い入れのため市中一般に景気付くは例なるに本年は給料安くして且つ人員も十分雇い入れざる模様なるため至りて沈静なり毎年南部地方よりの出稼ぎ人夫は一万人位なるに本年は七がけくらいの由にして給料は各平均七円
馬車と腕車の競争
弘前市の車夫が客より不当の賃金を貪り居るを防がんとて起これる市内馬車会社は追々と賃金を引き下げて市内中如何に遠路の所にても五銭にて乗り廻らんと触れ込みたるより人力車組合にても大元気を出して市内中五銭と値切り停車場前の如き非常の大競争にて尚頻りに値下げをなすの模様なれば乗客にては大喜び去る十二三日より昼夜を問わず五銭の値切りいまだ競争は数日間継続せらるべしという
願栄寺の損害高二万余円に及ぶ
このほど焼失したる三戸郡八戸願栄寺のことについては既に記す所ありしが尚聞く所に依れば同寺はかつて焼失せることあり目今は仮本堂なりしも今回は庫裏仏像経巻は勿論百年伝来の宝物家具家財等に至るまで悉皆烏有に帰したることとて其の損害高は実に二万円の多きに達したりと言うこの程の陸奥日報に同寺の損害二千円云々と記載したるも右は誤報にて現に檀家なる同地の浦山政吉氏には熱心なる信者にして是まで同寺に寄付せる高のみにても二千円の及びたるが今回の焼失に就いても殊の外憂慮しこのほどの如きは七十歳の高齢なるにも拘わらずわざわざ小湊の某寺に赴きかねて同寺に保存致し置きたる仏像を借り受け崇敬し居るとは熱心の信者と言うべし
長谷川藤次郎氏の篤志
三戸郡湊村長谷川藤次郎氏は人の知る如く揚繰網の率先者なるがこの度東北漁業組合の陸奥湾内における漁民遭難者の不幸をば同業者のこととて深く之を憐れみ爾来熱心店員を八戸、小中野、湊、鮫地方に奔走せしめ結果金五十円を得たればわざわざ店員を出張せしめ該金は本部事務所に届け出たりと数十里隔てたる地方に於いて思わざるの慈善に接するとは遭難者まさに神を慰し遺族者亦厚意に感泣せん
揚げ繰り網の調査
石川県水産巡回教師石川県水産講習技師庵原文一氏は三戸郡長谷川藤次郎氏の上げ繰り網の調査のため昨日来青県庁に出頭直ちに同地へ赴きたり
放火騒ぎ 八戸町にては五六日前より毎晩の如く諸方に放火するものあり幸いにいずれも早く認めて大事に至らざるも其の筋にてはそれぞれ取り調べ中なりと右に付各町にても俄かに火の用心の相談などありて穏やかならざる模様なりと
誤って銃傷を負わしむ 去る二十八日のことなりき八戸町大字三日町旅人宿杉本利七方の雇い人なる山田徳次郎(十八年)は同日午前八時五十三分の列車にて出発したる客あり依って其の客室を掃除せん為裏二階室に至りしに同宿滞在中(当時不在)なる客高橋清兵衛所持の六連発込みピストルの床の間に置かれたるを認め物めずらしげに之を取り出してもてあそびながら同じ雇い人三戸郡田子村士族嘉右衛門の孫上郷剛(十一年)を呼びピストルを示し弾丸の込めあるに気づかざればこれは斯くものなりと引き金を引きたるにバット音のせしを奇とし二度引きしに轟然一発前にありて余念もなく之を観居れる剛の咽喉に命中したるより何かはもって堪るべき、剛はその場に倒れて一時気絶したれば徳次郎は大いに驚き直ちに剛を抱きて医師種市良一氏方に駆けつけ治療を乞いたるところ創傷は一箇所にして咽頭の下胸骨上部中央に位し気管に達するところ縦三ミリ横八ミリなるを以って医師逸見鶴亀を助手として手術を施したるも弾丸の所在を発見することあたわず負傷者は精神たしかなるも重症のため生命おぼつかなき由危険至極というべし少年の分として銃を弄するはいましむべきことなり所有者に於いても平素危険なき様十分に注意しおくべきなり
八戸町の正月元旦
八戸町における陰暦正月元旦売り出しの競争は本年は中々に甚だしく景物は一番より三番まで糸織り或いは毛布鏡餅等を進呈し午前三時開店の広告を市内近在に散布したるに時間より前各正札店の店頭に押しかける者甚だ多くさながら火事場の雑踏の如く店前には各々大旗及び高張玉灯を掲げるなど恰も祭礼の有様にて市中の賑わい申し訳なかりし中に甲文呉服店にては午前三時開店の所開店前に来集せし人々のあまりに多かりしため二時ごろに開店せしが三時に至りてあばれ客入り込みて時間前に開店せしを罵りたるものありしと
八戸の魚類販売禁止の紛議
八戸は由来平穏の地なるに頃者は種々の問題起こりて人民を騒がしつつあるは実に悲しむべきこととして亦当局者の宜しく注意すべきものならんか殊に八戸警察署が魚類営業にたいし販売禁止を命ずるに至りこれが為に営業者の紛議を醸し其の不法を上官に訴え一方には之を法廷にまで争わんとするの珍事を惹起するに至れるはそもそも誰の責めぞや先ず之が顛末を聞くに八戸町六日町といえば一名之を肴町と称し昔時より魚類販売の場所として今日まで継続し来れる場所なり而して従来の慣行上表通りの官地をもって魚類販売場に充ておれるに今春街路取締規則励行の結果としてひとまず官地の販売を取り払う命令は時の警察署長圷氏より降りたりしかれども之が為に少なからぬ不便を感することなれば営業者一同には再び従来の通り許可を与えられるる特別の詮議を乞うこととなり居りし内圷氏は非職となりて今の署長石黒氏其の後任なりしが石黒氏の赴任を聞きて総代等警察署に出頭し石黒氏に面会して右の事情を具申したり是四月十日のことなりしが当時石黒氏はよく其の事情を聞き尚願書にして差し出すべしとのことなりしを以って翌日願書を差し出したるに同氏は赴任怱々のことにてよく地方の事情を承知せざれば何れ取り調べの上何分なる指令を与うべしと言うにありき然るにその後日にちも経過する内或る狡児等この機乗ずべしとなし遂に隣町の朔日町を以て六日町に代わらしめんとして種々運動の結果としてこの程石黒氏をして朔日町に対して魚類販売所を官地内に設く許可を与えせしめ同時に六日町の請願を却下して以て古来の肴町を打破し従来の営業者の不便を感じせしむるの方針を取りたるはまだしもの事なるが此れが為六日町の営業者が大いに驚きしも止むを得ず涙を飲んで従来の販売所の代わりに己が家屋をさらしめ私有地内に於いて営業しおるものにさえ故障をつけ遂に去る十九日限り六日町の営業者一同に向かって営業停止を命ずるに至りたり聞く是れ或る者等が謀り一攫千金を得ながために六日町の営業を悉く朔日町に移し朔日町にあらざれば魚類の営業をなすことあたわざる様たくみたるものにして其の望み通りに出来たるより一味のものは手を打って計略の図に当たりしを喜びつつあるに引き換え六日町の営業者こそ憐れむべき境遇に沈淪(ちんりん・おちぶれはてること。零落)しつつあることなれば非常に激昂し相手の手続きを踏みその筋の許可を得て営業しあるものか警察署の為にみだりに営業停止せらるるべきいわれなしとして断じて警察の命に応ぜず是警察が人民の自由を妨げ営業を害するものなりとて六日町の営業者総代は県庁に出頭して陳情することとなり且つ警察署がいよいよ営業停止に応ぜざる廉を以って営業者を処分する時は飽くまでも是非を法廷に争う覚悟にて正式裁判を仰ぐこととなり居る由なり然るに六日町は従来の肴町にて至りて便利も良く何の不都合もなき之に反し朔日町は百姓町にて馬小屋も魚類販売所もゴタマゼといわるるほどの所にて衛生上よりも寧ろよろしからず万事不自由なる所にも拘わらずここに至りしとなれば世間にては石黒氏の所為を疑うものあるも無理からぬことにて其の間には種々の魂胆もある由なれどもこれは論外として先ず斯くの如く人民を騒がし居る以上は当局者に於いても速やかに処分をつけざるべからず