「地方行政と談合」
公共事業の競争入札に関する談合疑惑は、全国でも珍しい事ではない。
「談合なくして、民間企業の生き残る道はない」と言っても過言ではないだろう。それは、歴史的存在感のある業態でもあるからだ。身近な所で公認のごとく平然と行われてきたからだ。しかし、社会環境の変化と共に表面的に形が変わり、あたかも談合など無いと象徴するかのように装い、その裏では巧妙な手口で密かに現在も行われている。
私は民間企業を定年退職してから、市役所を訪れるのは一年と四ヵ月振りであった。市民広場右手の舟をかたどった噴水に懐かしさを感じた。庁舎正面を入ると右は市民ホールであるが、市民課や年全課を訪れる人達の一時の憩いの場でもあった。軽快なバックミュージックは、静かで安らぎを与えてくれる。そんな時、二階の窓が開きたばこの臭いが鼻をつく、そして、ジャラジャラ、ジャラとマージャンパイをかき混ぜる音がきこえてくる。紛れらなくマージャン熱戦中の気配である。いくら暇でも勤務中にマージャンは無いだろう。これは何なのか確かめてみる必要性を感じた。
好奇心の強い私は、市民課側の階段を上り、その部屋をのぞき込んだら何と記者クラブの連中だった。手際よくパイを指で操る姿こそ、強かなプロ意識と情報収集その道のベテランたちだった。四人のメンバーは、愚痴めいた調子で勝手気ままに、方言を交ぜながら語っていた。偶然ではあるが仕方がない、私は聞き耳を立て、その概要を聞き込んでしまった。その日から私は身も心も多忙な日々を送ることになるとは予想もしなかった。
平成十三年十一月、地元有力新聞社の編集長宛てに一通の封書が郵送されて来た。その内容は、八戸市が発注する公共事業工事の入札に関する投書であった。つまり「たれこみ」である。内容は、二日後に行われる市内二丁目の道路補修工事の競争入札に関し、指名業者十四社すべてが落札予定金額の情報を入手している、そればかりではない、落札金額や落札業者までが決まっていると言う。これには納得行かない、と言うものだ。
某新聞社は、市役所にこの件について取材を試み打診したというが、打診した相手は誰なのか、役職や氏名は不明である。
その頃、某会社の電話が鳴り響く、入札担当者同志の会話が始まる。いつも午後六時半ごろである。
「もしもし、順番だから仕方ないよ」「違約金はショベル賃貸料の名目で請求書をまわしといて」「一回目だめなら1,5下げていくよ_」「次の親はあんたなんだから、よろしくね」「今回は研究会なしでいくよ」「この数字で大丈夫かい」「会長からのお達しだから良いんじゃない」「あの場所はヤバイよ」「ファックスはボツだよ」「OK」
○この会話を要約すると次のようになる。
発注者(市)は、指名願い書を提出し、あらかじめ入札参加に認定された業者の中から、工事内容や規模等によって選定されるが、種別毎に個別に指名される。このグループは、落札する業者を順番制に決めているようだ。しかしこの場合諸事情による話合いによって、落札当番でない次の業者が落札することになったようだ。この場合、本来落札予定だった業者に対して、別名目で所定の金額を支払うシステムのようだ。つまり、ショベルカーの賃貸料として請求書を出して、経費として扱い支払ってもらう仕組みだ。又、落札予定業者が入札書に金額を明記し、札入れしても発注者側の落札予定金額に達しない場合は、再度入札を行う場合もあるので、次からは金額を一回目より1.5%下げる。当て馬業者はそれより高い金額で入れる。但し、(一回目より)高ければその業者の入札権は失格となるから緊張する。研究会とは、その地域や業界によって呼び名が異なるが、この場合は、この物件の入札参加する業者だけ一同に集合し密接な打合せをすることであるが、今回はこの集会はやらないとの連絡のようだ。特にこの件についてファックス等書面による連絡は一切しないよう注意している。最後に、落札予定全額を落札予定者自身が見積もり算定したが、予定価格より高いようだが大丈夫か?と云う意見に対して、会長(談合を什切っている人)からの情報だから指示どうりやれば間違いないよ… と云う内容である。
この様なやり取りで何百万と云う取引が容易に成立する。この仕組みは単純な例であり、だいぶ皆から堂々と行われてきた談台統制による業態活性化の方法として注視されてきたのは事実であるが、これはほんの一例であることを承知しておくとよい。
*この内容は平成3年ごろから15年ころまでのものである。
*その他の内容
1 市職員に毎月「靴下」が東京のデパートから送られてくる。
2 担当者には、「高級スーツオーダー券」が送られてきた。
3 業者は落札価格を、どのようにして入手しているか。
4 議会議員の有利な特権と応用について。
5 下請け業者と大手会社の見えない関係について。
6 家一軒新築ぐらい容易い御用です、どうぞご遠慮なさらずに。
7 天下りが条件だった、今、その人はあそこに居る。
この投稿は深い所をえぐっている。少々古い所もあるが、今だから喋れるのだろう。八戸市民の誰もが秘していた事実。続々と白日の下に晒されるか。次回を期待するのは編集部ばかりではない。